教育 x 観光 クロストークから見える学びの本質 【前半】

「魅力的で持続可能な学校と地域をつくる」

10年目を迎えた隠岐島前教育魅力化プロジェクト。(公式HPはこちら

島根県隠岐郡海士町で、島と共に進化し続ける教育は島を訪れる全ての人へと繋がっていく。

観光や、地方創生の視察のみならず、島に興味のある誰もが学びを体験できるツアー

「Life is Learningツアー」が2020年3月に開催されます。

今回はこのツアーの発案者である大野さんと青山さん、そして学びのプログラムをコーディネートした藤代さんが、ツアーにかける想いや、発案のきっかけなど、 教育 x 観光 x 離島 の側面から対談しました。その内容をお届けします。


スピーカー:

大野佳祐さん:島前高校魅力化プロジェクトコーディネーター、島前高校経営補佐官
藤代圭一さん:一般社団法人スポーツリレーションシップ協会理事、しつもんメンタルトレーナー
青山敦士さん :島根県隠岐島海士町「マリンポートホテル海士」代表

資本主義に持って行かれていたと気づいた

藤代 今回はLife is learningという学びのツアーですが、こういうことをやってみたいな、というきっかけは何だったのですか?

青山 どこからかな・・?

大野 ・・・きっかけは、もはや思い出せないね。

一同

大野 1年ぐらい前に2人で話してた時に、「教育 x 観光」でもっとなにかやってみたいねって話しになったんだよね。

もともと島前高校魅力化プロジェクト(以下 魅力化)としては、高校生のみならず島全体として、学びの島を作るというのがゴールになっていて、 大学院構想があったり、いろんな形での学びが繋がっていくといいな、というのはあったんだよね。

でも自分の中では大学院というのは仰々しい感じがあってまだ早くて、それよりも今の世の中のニーズ的には、みんな答えを探しているけど、 実際に答えなんてものはなくて。

本当は自分で問いを立てて考え続けるのが正解なのにみんな答えだけ知りたがるなぁと。

だから視察でもまずは「成功のためのレシピなんてものはないですよ」というのを伝えていて、苦しんで泥の中で考えてもらう部分を通らないとその人の本質には近づけないと考えているんですよ。

世の中には本質に近づいていない人も多い感覚があって、そうなると本質を目指している海士町が学びの場となって、魅力化プロジェクトと観光協会がタイアップする事で島もまた活性化するし、 メンバー同士が共創していって面白い繋がりがうまれて行く機会になるといいなぁ・・・って思ったところかな

青山 ・・思い出してきました。

僕は自分自身が移住してきて10年間、観光という分野でなかなか成果が出せずにいたんだよね。

島を訪れた観光客も、雄大な景色などに満足はするけど、旅を通して大きな変化や感動を与える体験、というところまではいけていないと感じていた。

大野さんが今言ったことについて2人で話していた時に、「ここにわざわざきて、マニュアルやレシピを持って帰ってどうするの?」という話になって。

ここにはもうすこし自分の内発的な変化や社会の変化のヒントがあって、ここに何かを求めて来るというのはそういったヒントを求めて来ているのではないかと思った。

そのヒントを求めて来るという観点で、観光分野として商品化ができないかという思いになっていったんだよね。

コペンハーゲンの脱観光宣言のことを聞いた時に、めちゃくちゃ腹落ちしたというか、、

観光のフェーズが変わった先には、Life is learningというものが新しい観光の形なんじゃないかとね。

大野 そうそうそう。

たしか話しているうちに、ラーニングといいつつアンラーニングも必要という話になったんだよね。

たとえば、自分は「男性として」「社会人として」というあたりまえの概念に縛られすぎていて踏み出せない、 無自覚に東京に住み続けているけど、本当に東京に住み続ける必要はあるのかと聞かれると、皆別にそういうわけではなくて。

今日の延長線上で明日があるだけ。

そんな風に当たり前を疑えなくなっているだけ、と実感していた部分があったのね。

だから社会人の学びとしてはアンラーニングが良いと思っていて、今までのつめこみとは全く真逆の「とりだし」や「取り外し」をすると、この島では「ないものはない」ということを体現できるんじゃないかなと感じた。

本来持っている自分はあるはずなんだけど、鎧を着たり取り繕ったりして見失ってしまった部分があるのではないか、と思うんだよね。

青山 その時2人で話していたんだけど、僕はこのアンラーニングとかの辺りから、難しくて話についていけなくなっていたんだよね。

あれから時間が経って、今自分の身の回りで起きていることを見ると、その内容がとても腑に落ちる。笑

大野 経営者層も必要なのは、結構アンラーニングなんだよね。

新しい取り組みをしてみるより、何かをやめてみたり、自分の弱さをさらけ出してみる、なり 経営者として強くなければいけないという思い込みを、バコッと外す、剥がす必要があると思う。

そうるすと、大人向けコンテンツはこれからはアンラーニングなんだろうなぁと考えていたんだよね。

青山 そうそう、その「外す・剥がす」きっかけが、島内でのフィールドワークでできるんじゃないか。

それがこの島に来る意味になるのではないかなと思って。

さらに、剥がす追い風として「問い」を出せるか、そのためにフィールドワークで「しつもんカード」を使おう、という方向になったんだよね。

大野 そのときに答えを教えて「あなたは男性としてあるべきではないんですよ」と言っても、理解するのは無理な話で、 それをどうやって気付けるかというと、自分で問いを立てて、自分が本当にそうなのかなと思った時に「そうじゃないかも」という所に初めてリーチできるもので。

「そんなに経営者として強くなくてもいいか」と思っても酒飲んで寝て起きたら忘れてて、次の日にはまた経営者として強くいないといけないという社会になっているんだよね。

それで「問い」を立てるとしたら、藤代さんがいるよねという話になって、 やるなら何か手元に残るもの、ということでしつもんカード作ろうという話になったよね。

で、またカードといえば藤代さんだよねと。笑

藤代 光栄です。笑 

自分としても、初めて来た時から何らかの形で海士町に関われたらいいなと思っていたので、とても嬉しく思っています。

先ほどの話に少し戻りますが、お二人は海士町にきてアンラーニングのように元に戻った部分もあるでしょうし、Iターンの人たちや島に関わっている人たちをみて印象に残っていることはありますか??

大野 自分自身の一番の気づきは、相当資本主義に持って行かれていたということだね。

自分の脳内や立ち振る舞いは全て資本主義に犯されていて、 効率性や生産性も当然上げるべきという感じになっていたんだよね。

例えば、マニュアルというのも無自覚に「作るべきもの」と捉えていたが、本質的な部分ではマニュアルを作ることではなく、マニュアルが「無くても円滑に仕事が進むこと」であるんだよね。

時間を短縮して無駄を省くためにマニュアルを作るのであって、それは投資に対して早く回収をするためで、そのサイクルを如何に短くするかの道具のはずが、島に来てまで同じことやっているなって気づいて、それが驚異的に嫌だったんだよね。

島に来て半年くらい経って、初めて地区の祭りに参加したんだけど、、、祭りが本っ当にグダグダだったのね。

生産性もへったくれもなくて・・笑

18時から練習と言われて、仕事もあるしいけねーよ!と思っていたが、初めての祭りだったのでしぶしぶ行ってみると、18時には2人くらいしかきていなくて、 18:15頃にわらわら集まってきて、それから30分くらい練習するけど、19時くらいから「まぁ飲もうや」ということになって笑、それを週3回。

わざわざ集まって練習を重ねるほどでもないし、家でも練習ができる内容だけど、一度騙されたと思って付き合ってみることにしたんだよね。

そしたら如何に自分が経済性や効率性を求めているかということに気づいて、 祭りの目的は、多世代が酒を飲み交わしながら祭りのことを伝承していくことだから、最後が下手くそでも何でも良いんだよね。

藤代 なるほど、なるほど

大野 つまり結果はどうでもよくて、そのプロセスが大事ってことで、 結果的に当日失敗しても「お前下手くそだったな〜!」でめっちゃ盛り上がるし 何年経っても「あいつは下手くそだった」という語り草になるし「でもあいつはそれまでのプロセスで頑張っていた」という文化を作っていくことに通じる部分があって。

でも以前に東京でやっていたことは真逆で、 途中のプロセスはどうであれ、結果がよければ気にしないし メンバーを傷つけたとしても、結果が良ければ良いという、超資本主義・経済至上主義的な考え方だったんだけど、 この島では伝統文化が至上主義だから、その継承が一番の目的だから。

30分しか時間はないが、飲むことに価値があるんですよね。

藤代 じゃあその時にはもう祭りは始まっていたということですよね

大野 そうそう、もう始まっていたの。

みんなどうしてそんなに練習に来い来いいうのかと思ったら、それは練習じゃ無くてもう祭りが始まっているから早く来い!ということだったんだよね。笑

青山 そうそう、4月の海士町の伝統一大イベント、綱引き大会もそうだよね 。

年末あたりから地区ごとに練習が始まって、(一同「早い早い笑」)体重調整なんかして、そこのコミュニケーションで地域の文化を作っていっている。

大野 勝ったら結果的に嬉しいけど、最終的には勝っても負けてもあんまり関係なくて、 どちらかというと、地区の人たちが一致団結するというプロセスに重きが置かれている、というのが自分の中ではものすごい腑に落ちて。

その後に魅力化プロジェクトの構想を作っている上でも同じことが起きて、プロセスが凄く大事だなって感じた経験もあって。

それは自分の中の一番大きな部分がボコッと外れたようなアンラーニングの体験だったんだよね。

今は経済的なロジックや感覚を持ってるから、いつでも行き来できるハイブリッドになったような感覚があって、 それが35歳くらいで、いままでこれしかないと思っていた幅が、実は倍あったという感じで広がって、そしたら物事の見え方が変わったなぁという経験なんだよね。

藤代 なるほど、青山さんはどうですか?

ご自身でそんな体験はあったりしましたか?

青山 自分の中で強烈なアンラーニングの体験は盆踊りだったなぁと思って。

昔から海士町では8月13日に隠岐神社で盆踊りを何十年とやってきていたけど、なくなってしまって、やっぱり必要だとなって一度復活したけど、またなくなってしまって。

そんな状態で無くなりかけていたものを、5年前に有志で再び復活させようとしたんですよ。

その時は自分は発起人の1人でもあって、目的は隠岐神社の活性化でやったんだけど、地区の人たちがものすごい協力をしてくれたり、 「どうしてそこまで」って思うほど、地元の大工さんも関わってガツガツやってくれたりと。

その時は地域のとの関わりから学ぶものが沢山あったし、復活という目的も達成できて、来年もやりましょう!ってなった。

でもそのあとに僕が自分自身の職が変わって、ホテル経営者になって、8月13日なんて一番忙しいタイミングで、マジで盆踊りなんかしている場合じゃない!という状況になってしまって・・・

そういう「どうしよう」という状況の時に、盆踊り復活を一緒にしてくれた有志や地区の方が、自分抜きでも次の年も盆踊りをやってくれたんですよ。

僕は盆踊り当日は全然手伝えず、仕事が終わった後に、盆踊りの打ち上げの直会(なおらい)に行ったら、みんなが「これはもうみんなの役割だから」と言ってくれて。

もともと隠岐神社の活性化のためにという名目で復活させたけど、今はどちらかというと盆踊りの空間と時間と仲間と集まってくる人たちの、あの時間が良かったというものになっていて。

自分自身は目的のために動きたい人間だから、目的がないことはあんまりやりたくないんだけど、 あの盆踊りだけは、盆踊りをやるためだけに動きたいと思っているし、下手したら一年で一番楽しみにしている夜というくらい楽しみになっていて。

それは、今考えると自分の中で大きなアンラーニングになっているかなって感じてますね。

藤代 確かに、生産性をあげて何するかっていうと、更に仕事をするんですよね。笑

でもそれって普通だと思ってるんですよね。

大野 なんのために生産性を上げるかっていうと、多分誰も答えられないじゃないですか。笑

藤代 確かに、1時間でできることを3時間かけてやってたら、そこをぎゅっと生産性を上げて、さらに価値があると思えることに時間を使うというのはいいと思うんですけど、 じゃあなんのためにするの?というところに答えられないと、まさに生産性を上げるだけが目的になってしまいますよね。

AIが出来ること、人間しか出来ないことは?

大野 目的がないことってやっちゃいけない風潮ってあるじゃないですか。

でも割と「なんとなくそう思う」とか「やった方がいいんじゃないかと思う」とか動物的な直感って結構あると思っていて、 でもそういうことを会議で言うとダメ出しされるっていう。

祭りも今年やるのか、どういう風に決まるのか全然わからないんですよ。

誰かがやるぞって言い始めて、確かにそろそろやってもいいかもな、、って言うのが2-3人続くと初めて「やるか!」ってなるんだけど、 そもそもの「今年やる目的は?」とかなくて、基本的に「なんとなく時期がきたかな〜」で。笑

藤代 へぇー、でもみんなのやりたいって気持ちはそこにあるんですよね?

大野 そうそう何人かのタイミングが合ったら「やろっか」ってなる。

藤代 そういう意味では、とてもピュアというか、 僕スポーツの仕事をしているので思うんですが、 子供達がスポーツがやりたいからやっているのに、何を目指しているの?と聞かれると嫌になってくるんですよね。

好きだから始めたことなのに、他の目的を持たないといけないって苦しいんですよね。

大野 数字で決められることだとAIができるじゃないですか。

人間ができるのって「なんとなくやめる」っていうロジカルじゃない、センスの部分なんですよね。

AIは「なんとなく」でやめられないから、人間だけ唯一なんとなく「今日やめとくか・・」みたいなことできる。

これからはおそらくそっちに価値が絶対に出ると思っていて、 でも人間はロボットと同じことを求められると言うか、論理が通っていないとやらないというのは 社会が苦しくなってくるよなぁって思いはありますよね。

藤代 日本人の空気を読むっていうことの良いところから考えると、 「なんとなく今日はそういう雰囲気じゃないからやめておこうって」結構察することができますよね。

もしかしたら今まで良いと思われなかったことが価値がでるのかも。

大野 意外に人間らしいじゃないですか、察しちゃうし、余計なことばっかり考えちゃってメンタル病んじゃう。

凄いことだよね。ちょっと勿体無いかなって思う。

【後半】へ続く


Life is learningツアーについて

隠岐島前教育魅力化プロジェクトと海士町観光協会が協力し、大人がたっぷり学べる3日間のツアーを作りました。

トーク中の「しつもんカード」を実際に利用し、ここ海士町で、大野さん、藤代さん、青山さんに加え、海士に住む町民、そして参加者同士の交流を得ながら自分自身への問いを見つける二泊三日の旅に出ませんか?

学びとはなにか?教育とはなにか?といった学びの本質を大人がたっぷり学べる三日間。

プログラムの内容(一部)
・島前高校生たちが隠岐國学習センターで将来について真剣に向き合う「夢ゼミ」の受講

・島に魅了され島での暮らしを選んだ移住者との対話

・島の一番の魅力である島の人との触れ合い。

<こんなあなたをお待ちしております>
・まだ海士町に訪れたことがない人。
・せっかく行くなら島について学び、持ち帰りたい人。
・どんな関わりが出来るかわからないけど、自分も飛び込んでみたい人。
・教育の仕事に興味がある人。
・自分らしく生きたい人。

老若男女どなたでもご予約いただけます。

ツアーの詳細

日程:2020年3月20日〜22日の二泊三日

予約、詳細はこちらから

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